プロフィール

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池崎 功

1934年東京都生まれ。日印芸術幻想伝栄冠大賞、日本美術評論家大賞、ジャポニスム2018グランプリ。
個展/72年第1回個展(銀座村松画廊)、73年第2回個展、77年第3回個展(ニューヨーク市滞在作品)、80年第4回個展(銀座村松画廊)。
出版/著作画集「京都枯山水庭園図譜」(81年平凡社)、著作画集「東京オアシス散歩」(85年昭文社)。

1973~1976年ニューヨーク市在住、A/D ASSOCIATES, INC.(アメリカ人経営のアートスタジオ)にグラフィックアーティストとして勤務。

絵画制作のメインテーマは人間の性愛に関することで、具象、抽象を問わず試している。

出版物への版下制作では教科書、図鑑、立体地形絵図等、多種、多様。2000年より(株)移動教室出版事業局と連携して日本各地の都市、自然公園等の鳥瞰絵図を製作中。

彷徨う魂の活写――そのパラドキシカルな展開に浮上する愛

目覚ましい現代科学の進歩に目まぐるしく飛び交う情報社会。 池崎功氏の作品には、現代を象徴する〈砂漠の男女〉が屡々(しばしば)登場する。 現代社会に隠匿されきた人間の渇望、その内的世界に深く潜入し、我々の深部を掴んで見せる。 その冷徹な迄のラジカルな手腕は、恰も天空を音も無く飛ぶ大鷹が一瞬にしてターゲットを射止めるが如く鋭い。 それは抽象絵画制作の他、精密な斜投図や鳥瞰図制作に携わる氏の客観的スタンス、俯瞰と仰視(凝視)との複眼的視座を淵源とするものかも知れない。

が然し、類稀なる描写力と表現力なる才知こそが氏の慧眼たる所以であろう。 その偉才を放つ表現は、精緻な筆致と対照的な柔らかなパステルカラー。 その透明感と浮遊感が、我々の不確かな存在を尚も揺るがし、更にはデフォルメされたフォルムの彎曲した世界が不思議なリアリティを醸し出す。 存在と不在、虚構と現実、この二律背反なる殊絶な構築で以て、我々をいとも簡単に迷宮へと誘(おび)き寄せるのである。

その迷宮に彷徨い乍ら、我々は己の脳内を弄(まさぐ)るというパラレルな世界と遭遇する。 そこでは虚実綯い交ぜの内なる不在感、喪失感と向き合うことになるのだ。 そして潜在意識なる孤独からの回避へ、即ち虚には実を実には虚を補完しようとする脳(本能)が働く。 それが偽らざる愛の渇望であり、人間の本質であることを氏は敢えて黙し、我々に投げかけ、回答へと促す。

人間の相対的な心理を巧緻に組み込み、パラドキシカルに真実を浮上させる氏の作品世界は、「主体と客体の共鳴」なる構図(絵画が担うパート)から脱却した言わばインスタレーション的な構築を平面で見事成し遂げたと言えよう。 この斬新な世界は、曾てエルンストの文学性やダリのフロイト的世界とは異なる普遍性「人間の内部に肉迫した」新たなるシュールレアリズムの到来ではないだろうか。 現代に彷徨う魂の活写、そのシニカルで諧謔的スピリットに富む作品世界は、現代を見霽(みはる)かし、人間の内部を啄(ついば)み、核心を鷲掴みにする。 そのパラドキシカルな展開に浮上する氏の人間愛。――奥に秘めた輝きが実に心憎い。
文/山口 知子